高齢糖尿病患者生活向上プロジェクトを実施します

 日本臨床内科医会では、高齢患者の糖尿病治療における血糖コントロールで見落とされがちな低血糖リスクの軽減を主目的とした「高齢糖尿病患者生活向上プロジェクト(スマイルプロジェクト)」を、2012年11月1日より実施いたします。なお、本プロジェクトのサイエンティフィックアドバイザーとして門脇孝教授(東京大学大学院医学系研究科 代謝栄養病態学(糖尿病・代謝内科学))と横手幸太郎教授(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学)にご協力いただき、日本医師会にご後援いただきます。
 高齢糖尿病患者生活向上プロジェクト(スマイルプロジェクト)は、低血糖リスクの軽減や食後高血糖の改善を含む、より質の高い血糖コントロールの啓発を通じて、高齢糖尿病患者の暮らしの質を向上させ、笑顔で明るい日常生活を送っていただくことを目的とした医療提案プロジェクトです。活動内容として、以下の3項目を予定しております。
①高齢2型糖尿病患者を対象とした1万人大規模調査「SMILE STUDY」
②医療従事者への啓発を目的とした「座談会・講演会」
③患者さんへの啓発を目的とした「啓発資料の配布」
 今回実施する1万人大規模調査「SMILE STUDY」は、高齢糖尿病患者を対象として実施する、低血糖に関する実態調査とより質の高い血糖コントロールを目指した調査研究です。この調査では、医師が記入する調査票を用いて調査を実施いたします。2012年11月より2年間で1,000~1,500施設において合計1万例の調査を実施し、その後解析を予定しています。(「SMILE STUDY」は患者登録を終了しております。今後は観察期間を経た後に解析結果を発表する予定としております。)

■隠れ低血糖とは
 通常、低血糖が起こると「冷や汗」などの軽度な自覚症状から、患者さんは低血糖であることを自覚し、医師へ相談することができます。しかし、高齢患者では、軽度な低血糖の症状が日常生活での疲れや歳をとったことで起こる症状と類似しているため、見逃されていることがよくあります。このように、見逃されてしまう軽度の低血糖が「隠れ低血糖」です。従来、高齢患者では軽度の低血糖状態は現れないために、突然、重度の低血糖で意識障害などが起こることが問題になっていました。しかし、実際には多くの高齢糖尿病患者において軽度な低血糖の症状は起こっています。その症状に注意することが、より安全な治療と質の高い血糖コントロールにつながります。

■日本における糖尿病治療の実態
 2011年現在、日本人成人における糖尿病患者の約6割が60歳以上のシニア層*です。高齢患者にとっては、若年患者に比べ適切な血糖コントロールが難しいため、食後高血糖に加えて低血糖によるさまざまな症状や合併症が発現しやすくなっています。主なものは、うつ症状の悪化、認知症、転倒に伴う骨折、さらには心筋梗塞や脳卒中などの合併症です。これまで、血糖コントロールにおいては「高すぎる血糖値」ばかりが注目されていましたが、「低すぎる血糖値」が引き起こすリスクの軽減についても患者さんと医療関係者、双方への啓発が必要であるとして、本プロジェクトを発足いたしました。
*出典:国際糖尿病連合(IDF)「糖尿病アトラス第5版」(2011年)

■高齢糖尿病患者における隠れ低血糖の実態
 日本臨床内科医会は2012年10月に、「SMILE STUDY」に先立って高齢糖尿病患者における低血糖の実態把握を目的にプレ調査を実施しました。65歳以上の男女208名を対象に実施したこの調査では、約4人に1人が最近1年間で低血糖によると思われる症状を経験したと感じていることが判明しました。また一方で、約半数が日常生活における低血糖対策を実施していない現状が浮き彫りとなりました。

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