生活習慣病の治療の基本は生活習慣の改善、すなわち食事療法と運動療法が中心となる。実際に入院では薬剤を使用せずに食事療法と運動のみで血糖コントロールが可能となることをしばしば経験する。ところが運動療法の実施率は決して高くない。医師側も患者側も時間が無いとの理由が多い。さらに患者は運動が嫌いであると考える医師が多い。これは、短時間で効果的な運動が指導されていないことを示している。一般的な有酸素運動は効果が出るのに時間がかかることが多く、体重の移動を伴うことから高齢者や肥満者では転倒から骨折することもある。一方、最近レジスタンス運動が注目されている。これらの運動は無酸素運動に属するため血圧が上がるなどの懸念からほとんど指導されてこなかった。しかし最近ではフレイルやサルコペニアの概念が一般的となり筋量の増加も期待できるため生活習慣病の代表である糖尿病では積極的に治療に取り入れられている。適切な方法で行えばむしろ安全であり効果も高いことが示されている。是非この講演をきっかけに運動療法に興味を持っていただければ幸いである。