日本臨床内科医会

かかりつけ医のためのWEB講座

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第4回(2022年2月)

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これでわかる腎性貧血

日本臨床内科医会 学術部腎・電解質班 中山陽介

2019年のノーベル生理学医学賞は、低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(hypoxia inducible factor-prolyl hydroxylase:HIF-PH)の酸素感知および応答経路を解明したGregg Semenza、Peter Ratcliffe、William Kaelin Jr. 氏らが受賞した。酸素を使用したエネルギー産生である好気的解糖は効率よくアデノシン三リン酸(ATP)を産生することができ、すべての多細胞生物は好気的解糖を利用して生命を維持している。このため、酸素不足は細胞あるいは生体にとってただちに致死的な結果をもたらす。受賞の理由に彼らの解明したHIF-PH経路は虚血性心血管疾患、脳卒中、腎臓病などさまざまな疾患の病態生理の理解や治療において非常に重要である点が評価された。なかでも腎性貧血機序にHIF-PHは大きく関与している。現在PHを阻害することによりHIFを活性化しEPOを産生する治療法が開発され、腎性貧血治療は大きな変換期を迎えている。

慢性腎不全(CKD)患者では骨髄での造血を促すホルモンであるエリスロポエチン(EPO)産生低下による腎性貧血が起こる。EPOが赤血球前駆細胞にあるEPO受容体に結合し、赤芽球のアポトーシスを抑制することで赤血球生成を刺激する。さらに上述した通り、EPOのプロモーターにはhypoxia-responsive element (HRE)という転写調節領域が存在し、低酸素状態で働く転写調節因子HIFが貧血による酸素供給の低下を感知することによりEPOの産生を促すことが明らかになった。これより腎性貧血患者に対して遺伝子組み換え型EPOを外的に投与する治療から、生体内での内因性EPO産生を誘導し貧血を治療することができるようになった。この新規治療法は、既知のEPO抵抗性貧血患者の生命予後悪化の改善に対して光明を与える可能性があり大きな期待が寄せられている。本講演ではEPO低反応性の機序から腎性貧血を再考し、CKD患者におけるHIF-PHD阻害薬の可能性を考えたい。